・・・ところが先生僕と比較すると初から利口であったねエ、二月ばかりも辛棒していたろうか、或日こんな馬鹿気たことは断然止うという動議を提出した、その議論は何も自からこんな思をして隠者になる必要はない自然と戦うよりか寧ろ世間と格闘しようじゃアないか、・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・ありたけの執心をかきむしられ何の小春が、必ずと畳みかけてぬしからそもじへ口移しの酒が媒妁それなりけりの寝乱れ髪を口さがないが習いの土地なれば小春はお染の母を学んで風呂のあがり場から早くも聞き伝えた緊急動議あなたはやと千古不変万世不朽の胸づく・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・んなつまらない事はない、一つだけでいい、何か楽しくなつかしい思い出になる言動を示してくれ、どうか、わかれ際に、かなしい声で津軽の民謡か何か歌って私を涙ぐませてくれという願望が、彼の歌をやらかそうという動議に依ってむらむらと胸中に湧き起って来・・・ 太宰治 「親友交歓」
・・・あまりやっかいをかけるから家族のほうから玉を追放したいという動議が出た。そうしないでこの悪癖を直す方法はないかと思って獣医に相談すると、それは去勢さえすればよいとの事であった。いくら猫でもそれは残酷な事で不愉快であったが、追放の衆議の圧迫に・・・ 寺田寅彦 「備忘録」
・・・と父君と母上に向って動議を提出する、父君と母上は一斉に余が顔を見る、余ここにおいてか少々尻こそばゆき状態に陥るのやむをえざるに至れり、さりながら妙齢なる美人より申し込まれたるこの果し状を真平御免蒙ると握りつぶす訳には行かない、いやしくも文明・・・ 夏目漱石 「自転車日記」
・・・ 昭和十年は初頭から能動精神、行動主義文学の討論によって、活溌に日本文学の年次は開かれたのであるが、前年、これらの生活的・文学的動議が提出された当時から、知識階級についての理解、行為性の内容等のうちに含まれていた矛盾については、その・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 火みたいな速口で、活溌に、ときにはやや見当はずれに質問動議を連発する堀田昇一。 他の多くの同志のほかに――妙な者が会場に混っている。スパイと警官だ。 赤い布をかけた机に向っている五人の書記が、順ぐり出て、「日本プロレタリア・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫