・・・は飛行機の翼を払うだけの包容性を失わないのである。 こう考えて来ると、和歌と俳句は純粋な短詩の精神を徹底的に突きつめたものであり、またその点で和歌よりも俳句のほうがいっそう極度まで突きつめたものだということになるのである。 俳句にお・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・そうしてその指揮者の頭がよほど幅員が大きく包容力が豊かでなければ、結局狭隘な独吟的になるか、さもなくばメンバーのほうでつまらなくておしまいまでやり切れないであろうと思われる。しかしともかくもこういう試みは未来の連句のためにわれわれの努力し刻・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・我々の生活は穢ないものをもきれいなものをも包容している。迷いもすればまた火のように強烈に燃え上がることもある。耽溺の欲望とともに努力の欲望もある。この内面の豊富な光景を深く理解した人の見方が、彼らの見方よりもいかに多くの高い価値を持っている・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・その貴さは溌剌たる感受性の新鮮さの内にあります。その包容力の漠然たる広さの内にあります。またその弾性のこだわりのないしなやかさの内にあります。それは青春期の肉体のみずみずしさとちょうど相応ずるものです。そうして年とともに自然に失われて、特殊・・・ 和辻哲郎 「すべての芽を培え」
出典:青空文庫