・・・またある時は若い婦人に扮装して午餐会に現われ、父の隣席に坐って一座を驚かせた。 いよいよ Cambridge に入った。貴族の子弟であるので、Fellow Commoner として入学した。しかし極めて質素な生活をしていた。ここで有名な・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・大阪の鳥居君が出て来て、長谷川君と余を呼んで午餐を共にした。所は神田川である。旅館に落ち合って、あすこにしよう、ここにしようと評議をしている時に、君はしきりに食い物の話を持ち出した。中華亭とはどう書いたかねと余に聞いた事を覚えている。神田川・・・ 夏目漱石 「長谷川君と余」
・・・また、日常生活のこまごましたこと、たとえばこの書簡集にはもちろんロシア小説の到るところに現れて、分るようで分らなかった午餐を、自身食べたり食べなかったりして暮していると、散髪につき、風呂につき、チェホフがしばしば妻に訴えているロシア式不便を・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・日曜の教会礼拝時間後から午餐までハイド・パアクのこの騎馬道とそれに沿う散歩道は上流の社交場である。怪我をするなら上流の人だけがする唯一のところなのだ。騎馬巡査が二人その辺を行ったり来たりしている。―― 一時近くなると騎馬道の上にも人影が・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫