・・・「わたくしは一番ヶ瀬半兵衛の後家、しのと申すものでございます。実はわたくしの倅、新之丞と申すものが大病なのでございますが……」 女はちょいと云い澱んだ後、今度は朗読でもするようにすらすら用向きを話し出した。新之丞は今年十五歳になる。・・・ 芥川竜之介 「おしの」
・・・いまさら帰らぬことながら、わしというものないならば、半兵衛様もお通に免じ、子までなしたる三勝どのを、疾くにも呼び入れさしゃんしたら、半七さんの身持も直り、ご勘当もあるまいに……」と三勝半七のサワリを語りながらやって来るのは、柳吉に違いなかっ・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・ 長尾半兵衛の息、ケイオーに七八年居、いつ卒業するかあてのない男と婚約。――自分が引まわせる気のよい男という条件で。長尾の地所が二十万円でうれたら結婚する。それまで娘早稲田に聴講生として通う。 ○○された少年 美・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
出典:青空文庫