・・・それでも同情を持って来てくれた人たちであるから、案じたほどでなく、続いて来る様子に自分も安心して先頭を務めた。半数十頭を回向院の庭へ揃えた時はあたかも九時であった。負傷した人もできた。一回に恐れて逃げた人もできた。今一回は実に難事となった。・・・ 伊藤左千夫 「水害雑録」
・・・それだのに村の半数は出していないらしい。 健二は急いで小屋の外へ出て見た。丘から谷間にかけて、四五匹の豚が、急に広々とした野良へ出たのを喜んで、土や、雑草を蹴って跳ねまわっているばかりだ。「これじゃいかん!」「宇一め、裏切りやが・・・ 黒島伝治 「豚群」
・・・ ところが実際では日本の全耕地所有農家の約半数が五反未満の田畑をもっているに過ない。 玄米一石の生産費自作農二五円八七銭 小作農二八円七一銭 現在の農村は事変以来二割近い手不足で甚だ困難している。従って老人、女子、子・・・ 宮本百合子 「新しき大地」
・・・そのうち、半数はもう七時間労働でやっている。青年労働者は、十八歳以下は六時間。十六歳以下は四時間が目やすだ。 しかも五日週間で五日目に一日ずつ休みが来る。 賃銀は、一九一三年――革命前と比べると、話にならない増大だ。五ヵ年計画によっ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・今年のメーデーは特別神経過敏で、警官を半数ずつトラックに載せて一時間おきにつみかえ、待機するようにという説があった。しかし、それも余り仰々しいというのでトラックを準備するだけになった。看守が疲労で蒼くむくんだ瞼をし、「……トラックにのっ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・その半数は婦人労働者であるのは、上にのべたような事情からみても実に当然なことです。 旧支配権力が無条件降伏した一九四五年八月以後、第一回の総選挙が行われ、婦人代議士は三十九名という多数が当選しました。又憲法が改正され、民法改正草案が示さ・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・ 日本プロレタリア作家同盟は、婦人作家をこめて正しい線に立つ全プロレタリア作家がその文学活動においてこれまでは大衆の半数者としての婦人の闘争の注意深い取扱いをやや見落していたことを厳しく自己批判した。この立ちおくれを急速にとりかえし、プ・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ 日本全国のプロレタリアートの半数を占める婦人労働者の姙娠、出産の権利は、こんなものが一つや二つできたところで、どんな利益もうけはしない。 プロレタリアートが勝利したソヴェト同盟の政府は、まっさきに、どうかしてプロレタリアの母が丈夫・・・ 宮本百合子 「「市の無料産院」と「身の上相談」」
・・・更にその七分の男の半数は何割偽学生があったのか。ともかく学生服であったということも、世間の特別な注目をひいた。 翼賛会の国民生活指導部長喜多氏は、十三日の朝日新聞へ、国民的訓練の欠如、健全な娯楽の指導の必要としてこの事件を観察し、そこに・・・ 宮本百合子 「「健やかさ」とは」
・・・労働者クラブのキネマ研究会と国立の映画学校では、男と半数の女とが新しいプロレタリア映画の完成のために教育を受けている。これは文化の生産者の方から見たことだが、もっと意識の低い大衆殊に、農村の婦人大衆に向ってソヴェト映画が文化啓蒙の役割を演じ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の芝居・キネマ・ラジオ」
出典:青空文庫