・・・やはり、南京寺の一つ、黄檗宗に属す。この寺は、建物も大観門から青蓮堂――観音廟を見たところ、同じ辺から護法堂へ行く窟門の眺めなど、趣き深い。永山氏の紹介で、現住三浦氏が各建物を案内し大方丈の戸にある沈南蘋の絵を見せて呉られた。護法堂の布袋、・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・歴史小説の題材としての蒋介石の生涯は東洋史の新たな本質を語るものであり、彼の波瀾重畳に作用を及ぼす力は尾崎秀実氏の「南京政府論」が分析されている種類だけのものではないであろう。今日及び明日の作家には、文学の大道から、今日おびただしい犠牲を通・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・それに対して、昨今は家庭的な婦人が妻として求められているといえば、文学のことだの人生のことだのということはどうでもいいから、先ずスフの洗濯が上手で南京米をうまく炊いて、やりくりをともかく良人に苦労かけずにやってくれる妻、物価高の生活に耐えて・・・ 宮本百合子 「若い世代の実際性」
出典:青空文庫