-
・・・考えだした美人投票が餌になったのだから、いってみれば、おれは呆れ果てたお人善し、上海まで行き、支那人仲間にもいくらか顔を知られたというおれが、せっせっと金米糖の包紙を廉い単価で印刷してやっていたことなぞ、自分でも忘れてしまいたいくらい、情け・・・
織田作之助
「勧善懲悪」
-
・・・そして、売り借んだ。単価がせり上った。 僕は、傍でだまってきいていて、朴訥な癖に、親爺が掛引がうまいのに感心した。坪二円九十銭なら、のどから手が出そうだのに、親爺はまるッきり、そんな素振りはちっとも現わさないのだ。 とうとう、三円五・・・
黒島伝治
「浮動する地価」