・・・政治、経済、財政上の諸問題は、私が敢て足を踏みいれることに危惧の念を抱かざるを得ぬ分野に属する」これは、ジイドにとって、コンゴー当時からの態度である。一九三五年パリで行われた「文化擁護国際作家会議」でも、ジイドは作家としての「自分の中に持っ・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・第一次大戦のあとのヨーロッパ社会が急テムポで社会主義的に進んでゆくことに危惧を感じ、その防壁としてドイツのナチスを支援し、成長を助けることが得策であるとした国外の人々は、間違えてふたをあけた壺からあばれ出した暴力を、民主的な理性と良心とによ・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・然し、周囲が最善の道として彼女に示す処は、唯その一路であると同時に、彼女自身も若しそれを断然拒絶するとしたら、果して後には何が、よりよき生活として見出されるだろうかと云う危惧を払い得ないのです。 始めそのことを聞いた時、第一自分の胸に来・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
いつの時代でも、技師や官吏になろうとする人の数より、作家になろうとする青年の数はすくなかった。今の時代は、猶そうであろう。文学を愛しつつも、作家としての生活に様々の意味で危惧を感じさせるような事情がこの二三年間にたかまって・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
出典:青空文庫