・・・というのを見せてもらった。原名は「人生の歌」というのであるが、自分の見たところではどうも人生を謳歌したものとは思われない。むしろやはり一種のトーテンタンツであるような気がする。実際始めのほうの宴会の場には骸骨の踊りがあるのである。胎児の蝋細・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・という訳語が原名の「インヴィジブル・マン」に相当していないではないかという疑いであった。「透明」と「不可視」とは物理学的にだいぶ意味がちがう。たとえば極上等のダイアモンドや水晶はほとんど透明である。しかし決して不可視ではない。それどころ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ アインシュタインはこの「物理学はいかに創られたか」原名の序文できわめて示唆に富んだ数言を述べている。「この書物を書く間に、私たちは之をどんな人たちに読んでもらうべきかについてかなり論じ合い、またわかり易くすることについて苦心しました。・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・という訳名よりも、「ほかの神々」という原名の方が遙に内容に切実である。 バックはこの作品で、アメリカが、社会的な気風の特長の一つとしていつも社会全体にとっての英雄を渇望していて、何か偶然のきっかけでそのような英雄にまつりあげられた平凡な・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・ 原名「マリイ・クレエル」というこの作品は一九一一年に出版され、発表と同時にフェミナ賞を貰った。彼女は後二十六年の間に「マリイ・クレエルの工房」その他三巻の小説を書き、最後の作「光ほのか」を完成して一九三七年二月に南仏で歿したのであった・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫