・・・(私の美に対する情熱が娘に対する情熱と胎を共にした双生児だったことが確かに信じられる今、私は窃盗に近いこと詐欺に等しいことをまだ年少だった自分がその末犯したことを、あなたにうちあけて、あとで困るようなことはないと思います。それ等は実に今・・・ 梶井基次郎 「橡の花」
・・・体位向上徒歩奨励、幼児保健の問題、戦没者の母子寮の設立などと全く背までくっついていて離れられない双生児の歩む姿である。 風俗の心理というものは、このどちらかの一方にだけ範囲を限ってそれぞれのものがあるのではなくて、日常生活における二つの・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
・・・横光氏の知性の否定の傾向に結びついて、時代的な双生児である小林氏のこの旋回ぶりが哀れまざまざと浮立って映って来るのは何故であろう。 人類の歴史の発展において、迂遠なる大道である芸術の路上で、宙がえりやとんぼがえりをいくらしたとて、自他と・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・自身、その企業家サボタージュと双生児の性質を持っている民主化へのサボタージュをやっている政府が、どのような決定的方法を執り得るというのだろう。 最低賃金というものが公表された。二十五歳から五十歳までの男子最低四百五十円。これは成程今まで・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫