・・・ちっとも反応がありません。「私が名前も住所もかくしていたのに、先生は、見破ったじゃありませんか。先日お手紙を差し上げて、その事を第一におたずねした筈ですけど。」「僕はあなたの事なんか知っていませんよ。へんですね。」澄んだ眼で私の顔を・・・ 太宰治 「恥」
・・・それはとにかく彼がミュンヘンの小学で受けたローマカトリックの教義と家庭におけるユダヤ教の教義との相対的な矛盾――因襲的な独断と独断の背馳が彼の幼い心にどのような反応を起させたか、これも本人に聞いてみたい問題である。 この時代の彼の外観に・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・「人間は『鋭敏に反応する』ように教育されなければならない。云わば『精神的の筋肉』を得てこれを養成しなければならない。それがためには語学の訓練はあまり適しない。それよりは自分で物を考えるような修練に重きを置いた一般的教育が有効である。」・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・その一種特別な節をつけた口調も田舎者の私には珍しかったが、それよりも、その説明がいかにも機械的で、言っている事がらに対する情緒の反応が全くなくて、説明者が単にきまっただけの声を出す器械かなんぞのように思われるのがよほど珍しく不思議に感ぜられ・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・これは二つの画面の接触作用によって観客の心に生ずる反応作用をその自然のリズムに従って誘導して行くのである。それでこのモンタージュのリズムが観客の期待のリズムに共鳴するときにはじめて最大の効果を収めうるので、これは音楽の場合と全く同様である。・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ こういう環境におおぜいの若い娘たちを置いたら彼女たちはいかに反応するか。そこにいかなる現象が起こるであろうか。こういう問題を提出し、その解答を得るために一つのエキスペリメントを行なったのがすなわちこの映画であるかとも思われる。科学者が・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・ これとは話が変わるが、若い人にはとにかくとしても、もはや人生の下り坂を歩いているような老人にとっては、映画の観覧による情緒の活動が適当な刺激となり、それが生理的に反応して内分泌ホルモンの分泌のバランスに若干の影響を及ぼし、場合によって・・・ 寺田寅彦 「映画と生理」
・・・とか称するものは解釈次第でいろいろな意味にもなりまたむずかしくもなりますが要するに前申したごとく活力の示現とか進行とか持続とか評するよりほかに致し方のない者である以上、この活力が外界の刺戟に対してどう反応するかという点を細かに観察すればそれ・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・刺激に対して急劇な反応を示さないのはこの男の天分であるが、それにしても彼の年齢と、この問題の性質から一般的に見たところで、重吉の態度はあまり冷静すぎて、定量未満の興味しかもちえないというふうに思われた。自分は少し不審をいだいた。 元来自・・・ 夏目漱石 「手紙」
・・・しこうしてその文字の中には胸裏に蟠る不平の反応として厭世的または嘲俗的の語句を見るもまた普通のことなり。これ貧に安んずる者に非ずして貧に悶ゆる者。曙覧はたして貧に悶ゆる者か否か。再びこれをその歌詠に徴せん。〔『日本』明治三十二年三月二十三日・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
出典:青空文庫