・・・左右前後の綺羅が頭の中へ反映して、心理学にいわゆる反照聯想を起すためかとも思いますが、全くそうでもないらしいです。あんな場所で周囲の人の顔や様子を見ていると、みんな浮いて見えます。男でも女でもさも得意です。その時ふとこの顔とこの様子から、自・・・ 夏目漱石 「虚子君へ」
書物に於ける装幀の趣味は、絵画に於ける額縁や表装と同じく、一つの明白な芸術の「続き」ではないか。彼の画面に対して、あんなにも透視的の奥行きをあたへたり、適度の明暗を反映させたり、よつて以てそれを空間から切りぬき、一つの落付・・・ 萩原朔太郎 「装幀の意義」
・・・ この時期の評論が、どのように当時の世界革命文学の理論の段階を反映し、日本の独自な潰走の情熱とたたかっているかということについての研究は、極めて精密にされる必要がある。そして、当時のプロレタリヤ文学運動の解釈に加えられた歪曲が正される必・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・文学の歩みがその社会的相関の相貌をつよく反映して、種々な交錯の中に推移してゆかなければならないことも亦当然であろう。 最近の数ヵ月間に、作家による戦争のルポルタージュが前面におし出されて来ている。一九三七年の日本文学について語るとき、こ・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・ 元来、新聞発行そのものが、民意反映の機関として、またその民意を進歩の方向に導くための理想をもって始められた「文明国」らしい仕事であった。 資本も、そんなに大きいものではなかっただろう。記者として働く一人一人が、当時新しく強く意識さ・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・ コロンタイズムは、全く一九一七年から二三年間の混乱期にふるいブルジョア社会の性的放縦の最後の反映、火花として現れた変則な社会現象であった。四五年以上も経過してから、日本において、一つの急進的な性関係のタイプとして、イデオロギー的にコロ・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・――これらの性質は直ちにまた画布の性質に反映して、その特質を一層強めて行く。洋画のカンバスと、絹あるいは金箔。荒いザラザラした表面と、細かいスベスベした、あるいは滑らかに光沢ある表面。 これらの相違がすでに洋画を写実に向かわしめ、日本画・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・それらは、そういう寺社を教養の中心としていた民衆の心情を、最も直接に反映したものとして取り扱ってよいであろう。民俗学者が問題としているような民間の説話で、ただこの時代の物語にのみ姿を見せているもののあることを考えると、この時代の物語の民衆性・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・に置いた作者の人格を、きわめてよく反映している。彼の描く人と自然とは、常に彼の「享楽」の光に照らされて、一種独特な釣合をもって現われてくる。非常に広濶な、偏執のない心が、あらゆる対象へ差別のない愛を注ぎながら、静かに、和やかに、それらを見ま・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・ 麦積山の塑像は、この中央アジアの塑像の様式を反映しているらしい。それは、ここで主として問題としたような、推古仏の源流を思わせるあの仏像の様式について言えるのみならず、また戒壇院の四天王などのような天部像についても言えるであろう。表情を・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫