・・・の人々は、彼らの青春の祝福されるべき反逆性の頭上に一撃を加えられた。当時大逆事件と呼ばれたテロリストのまったく小規模な天皇制への反抗があらわれ、幸徳秋水などが死刑に処せられた。自由民権を、欽定憲法によってそらした権力は、この一つの小規模な、・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・彼にも、過去のリアリズム否定と、狭い日常性に封じこまれて来た、日本の私小説への反逆がある。彼の知性が、よりひろく、強靭であろうと欲している、その角度から少くとも、私小説的な要素を否定している意味での中間小説に対して、単純な断定をさけさせたの・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・通俗文学と純文学との質の相異はただ生活と文学的現実の中で、必然と偶然とに対する解釈を異にしているばかりでなく、「両者の区別は文学の本質である『反逆精神』の有無にかかる以上」通俗文学と純文学との対立は決定的であり、純文学の通俗文学への非妥協は・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
去る六月十一日、読売新聞の「世界への反逆」という文章で中島健蔵氏が、記録文学の名のもとにジャーナリズムにあらわれはじめた戦記ものの本質について注意をよびおこしたのは適切であった。 本年のはじめごろ『雄鶏通信』が国外のル・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
・・・奴隷自身の自由のための奮闘は、所有者にとって反逆とうけとられる。反逆という観念は、所有者の政策に反した。イカルスを死なせ、プロメシウスをさいなむような残忍さで、主人の怒りは才能と勇気のありすぎる不運な奴隷の頭上におちかかるだろう。身のほどを・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・ まさか御叛逆ではねえ。老近侍 もう、ずんと前からの事じゃと申す話でござるわ、陛下にお書面でお坊様のお役をきめる事はわしにさせて下されと申し越されてお出でなされたのはの。二三度までのお願にはお偉いお方じゃ程に陛下もおだやかに「ならぬ・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・の没趣味で、俗悪で、生気ない金銭支配への屈伏に反逆したのであった。 これらの人々は、ゲェテ、ホフマン、バイロンやスコット等の作品からも強く影響され、当時の社会の現実生活ではブルジョア共によって軽蔑され、価値を認められない存在であった未開・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・さては国に大乱でも起ったか、公の叛逆人でも出来たかと思うて、三門をあけさせた。それになんじゃ。御身が家の下人の詮議か。当山は勅願の寺院で、三門には勅額をかけ、七重の塔には宸翰金字の経文が蔵めてある。ここで狼藉を働かれると、国守は検校の責めを・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
・・・彼らの憎悪と怨恨と反逆とは、征服者の予想を以て雀躍する。軈て自由と平等とはその名の如く美しく咲くであろう。その尽きざる快楽の欣求を秘めた肺腑を持って咲くであろう。四騎手は血に濡れた武器を隠して笑うであろう。しかし我々は、彼らの手からその武器・・・ 横光利一 「黙示のページ」
・・・ 予は自ら知れる限りにおいて生まれながらの反逆者であった。小学の児童としては楠正成を非難する心を持ち、中学の少年としては教育者の僭越と無精神とを呪った。教育者の権威に煩わされなくなった時代には儕輩の愛校心を嘲り学問研究の熱心を軽蔑した。・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
出典:青空文庫