・・・ こういう新しいものを人形芝居に取り入れることについては異存のある人が多いようであるが自分はそうは思わない。もっと遠慮なく取りいれてみてもいいだろうと思う。見なれないうちは少しおかしくても、それはかまわない。百年の後には「金色夜叉」でも・・・ 寺田寅彦 「生ける人形」
・・・しかし写実を目的としない劇的映画にも、もう少し自在に天然を取り入れることはできないか。おそらくこれはいくらでもできる可能性があるのであろう。なんの映画であったか忘れたが東洋物の場面の間に、毒蛇とマングースとの命がけの争闘を写したものをはさん・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・自然を庭に取り入れる彼らはまた庭を山野に取り広げるのである。 月見をする。星祭りをする。これも、少し無理な言い方をすれば庭園の自然を宇宙空際にまで拡張せんとするのであると言われないこともないであろう。 日本人口の最大多数の生産的職業・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・と言ったというが、芭蕉の数奇をきわめた体験と誠をせめる忠実な求道心と物にすがらずして取り入れる余裕ある自由の心とはまさしくこの三つのものを具備した点で心敬の理想を如実に実現したものである。世情を究め物情に徹せずしていたずらに十七字をもてあそ・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・けれども、毎日が、そして現実が不如意だからといって、決して自分の生活に作り出すことも出来ず、取り入れることも出来ないものに気をとられて、その気をまぎらしてゆくことが、はたして青春の貧困を満すことでしょうか。そうは思われません。わたしたちはも・・・ 宮本百合子 「自覚について」
出典:青空文庫