・・・然るに日本に於ては趣を異にし、男子女子の為めに配偶者を求むるは父母の責任にして、其男女が年頃に達すれば辛苦して之を探索し、長し短し取捨百端、いよ/\是れならばと父母の間に内決して、先ず本人の意向如何を問い、父母の決したる所に異存なしと答えて・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
過般、榎本文部大臣が地方官に向って徳育の事を語り、大臣は儒教主義をとる者にして、いずれ近日儒教の要を取捨して、学生のために一書を編纂せしむべしとのことなり。然るに、徳教書編纂の事は、先年も文部省に発起して、すでに故森大臣の・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・子供のための文学の仕事をする作家は、小さい民衆が自由奔放に造る言葉、表現に対して、ひろい感受性をもつと同時に、それらの言葉を芸術の素材とし、取捨し、高める必要がある。 営々たる人類の進歩のための努力の結果は、将来、婦人の生活により多くの・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・ 巨大な建造物に、強い土台がいるというようなことを云えば人は、わかり切ったこととするのだけれども、規模も内容も大きい新しい文学をつくるためには、作家がどれほどリアルな眼をもって洞察し評価し取捨して現実を再現しなければならないかということ・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
・・・そんなに『文章世界』をよく読んでいたけれども、一人の人の見方や、考え方で、取捨の決まって行く投書というものが、私は嫌いで、遂に一度もしようと思ったことがなかった。『女子文壇』も私はちょいちょいみたような気がする。『女子文壇』は、母がとっ・・・ 宮本百合子 「昔の思い出」
・・・けに頼らず、もっと深く本質にふれて、占領地域におけるナチス軍の窮極における敗退の生活的・心理的な理由を、政治的にしっかり把握した上で、政治的機動性とでもいうようなダイナミックな力で、描こうとする対象を取捨し、必要によって、ぐっとつき迫ってい・・・ 宮本百合子 「よもの眺め」
出典:青空文庫