・・・こうして、人民戦線の提唱のとき、もう近代の民主的主張をひっこめて、非政治的に、非社会的にそれを提案した日本の一部のインテリゲンツィアは、その後ひきつづく人間復興という文化上の提唱でも、全く骨ぬきの、口先弁巧に陥らないわけにはゆかなかった。何・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・es 15eH来クラマールへ 引こす相談 五日 モスクへ手紙 No. 30 土ジェネへ二人で、十一時の汽車で立つというのに中途でm気分わるくして、中止、口先の同情実に低級な同情を欲する・・・ 宮本百合子 「「道標」創作メモ」
・・・と徒歩で行く男達は口先では急ぎ立てては居るが自分達許りの都を只の一月でも半年でもはなれると云うのが悲しいようであんまり大きな声は出せなかった。 車の動き出したのは日の高く上った時である。 一番先に徒歩の男、まん中に光君の車、車簾・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・好運の時には踏んぞりかえるが、不幸に逢うとしおれてしまう。口先では体裁のよいことをいうが、勘定高いゆえに無慈悲である。また見栄坊であって、何をしても他から非難されまいということが先に立つ。自分の独創を見せたがり、人まねと思われまいという用心・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・顧みて口先ばかり景気のいい徹底家の言葉に注意を向けると、思わずその内容の空虚を感じないではいられないのである。 けれども「あきらめ」に達したゆえをもって先生は人生の矛盾不調和から眼をそむけたわけではなかった。先生はますます執拗にその矛盾・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫