・・・読者は試みに例えば、マルキシズムに対する現代各人各様の態度を「あまりに深く信をおこして」以下の数行にあてはめて見るとなかなかの興味があるであろう。ありとあらゆる可能な態度のヴァリアチオンが列挙してあるので、それらの各種の代表者を現代の吾々の・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
斯ういう感情上のことは、各人各様であって、「男子は」「婦人は」と概括的に考えると、至極平凡なつまらないものになってしまいます。此世の何より、金持がいい人もあろう。美貌の異性がよい人もあろう。知識的なのが第一な人もあるでしょ・・・ 宮本百合子 「異性の何処に魅せられるか」
・・・ このことは各人各様に、さまざまの具体的な感銘を通して、普遍的であったに違いない。もし、そのモメントの価値を、各作家が日本の大衆の歴史的経験の一部として血肉をもって自覚し、それを表現しようと努め、しかも、それは絶対に許そうとしなかった強・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・もとから小説をかいていたプロレタリア文学時代からの作家たちは、何しろ十余年間、書きたく話したいテーマについて口かせをはめられていたのであったから、各人各様に、先ず書かずにいられない題材によって、云わずにいられないテーマを描きはじめた。「妻よ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・しかも、理論への情熱は主観的に高揚されて、謂わば各人各様の説を感想として主張し、そのことに於て日本のヒューマニズムの問題のおかれている多難性と、思想の多弁と浮動の激しさとを感じさせた。文化の代表者たちの上に見られたこの現象は、方向を求めつつ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ゆこうと努力している点で注目をひいている『埼玉文学』にしろ、同人たちは、より人間らしい社会生活の確保と、その文学の確立のために尽力してゆくという大きくて永続的な人民的努力のうちに、埼玉在住の人々の各種各様の文学的傾向と素質とをつつんで、民主・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・同人たちの作家としての活動は、プロレタリア文学に反対であるという一事では、その社会的な生活感情を等しくして結ばれていたが、その他の面では云わば各人各様で、或る作家は芸術至上を説き、或る作家は科学・機械文明との新しい結合で文学を見ようとし、或・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・率直な感想をゆるしていただきますが、たとえば『新日本文学』三号までにのったような評論は、指導的な意味をもったものもあり、さもなければ各人各様がおもしろいところなのかもしれないけれども、民主主義文学の諸問題の各面をそれぞれに担当して、ずっとよ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・かつてのように批評沈黙時代ではなく、今はむしろ、ある作品についても各人各様の批評が活溌におこなわれている。プロレタリア作家とブルジョア作家との本質的なちがいがぼやけて、リアリズムの解釈にもある種の混乱が認められるのが、今日の現実なのである。・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・文学運動があったこと、民主主義に立つ文学運動があること、それだけを平面的に文学陣営別にわけてその間でのままごとを許さない大きい底からの力で、歴史の舞台は、わたしたちみんなをのせたまま、文学的営みの各種各様をのせたまま、ゆるやかに、しかも急速・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
出典:青空文庫