・・・たちまち喉笛へ噛みつかれるぜ。まず早い話が満洲犬さ。」 お蓮はくすくす笑い出した。「笑い事じゃないぜ。ここにいる事が知れた日にゃ、明日にも押しかけて来ないものじゃない。」 牧野の言葉には思いのほか、真面目そうな調子も交っていた。・・・ 芥川竜之介 「奇怪な再会」
・・・ もうもうもう、今度顔を合せたが最後、きっと喉笛に噛みついてやるから。口惜しい。口惜しい。口惜しい。(黄泉 使 まあ、待って下さい。わたしは何も知らなかったのですから、――まあ、この手をゆるめて下さい。 小町 一体あなたが莫迦ではあ・・・ 芥川竜之介 「二人小町」
・・・咽喉笛鉄砲じゃ、鎌腹じゃ、奈良井川の淵を知らぬか。……桔梗ヶ池へ身を沈める……こ、こ、この婆め、沙汰の限りな、桔梗ヶ池へ沈めますものか、身投げをしようとしたら、池が投げ出しましょう。」 と言って、料理番は苦笑した。「また、今時に珍し・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・少女は彼女のまだ性別定かならぬ喉笛のむず痒さで演説の邪魔をしてはならないと知ってる。細い手の指をかためて口を押えて用心深くやっている。 この明かに未組織な少女の伴れは祖母さんだ。生れてから婦人帽というものは頭にのっけずにきた、そして、自・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ * 女と男は元来咽喉笛の出来工合から違う。又筋肉、骨格皆それぞれ男女違って居る。男は女の特色を気持よく感じ、又女は男の特徴を気持よく感ずる。それが性それ自身のもって居る美である。女の体が柔かくて、丸くって、・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・ 女と男は元来咽喉笛の出来工合から違う。また筋肉、骨格皆それぞれ男女違っている。男は女の特色を気持よく感じ、また女は男の特徴を気持よく感ずる。それが性それ自身のもっている美である。お互いのそれを完全に保護する。女の体が柔かくて、丸くって・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・婦人の才能が、一番歴史的に発揮されている音楽の領分においてさえ、その芸術貢献の道が、主として自然発生の女性という性の声楽の美と、その美にふさわしい一箇の喉笛にかかっているというのは、文化の問題として何を語っていることであろうか。 文学の・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
出典:青空文庫