・・・折井は神田でちゃちな与太者に過ぎなかったが、一年の間に浅草の方で顔を売り、黒姫団の団長であった。浅草へゆくと、折井は簪を買ってくれたり、しるこ屋へ連れて行ってくれたり、夜店の指輪も折井が買うと三割引だった。「こんな晩くなっちゃ、うちへ帰・・・ 織田作之助 「妖婦」
・・・わしはカイロ団長じゃ。あしたからはみんな、おれの命令にしたがうんだぞ。いいか。」「仕方ありません。」とみんなは答えました。すると、とのさまがえるは立ちあがって、家をぐるっと一まわしまわしました。すると酒屋はたちまちカイロ団長の本宅にかわ・・・ 宮沢賢治 「カイロ団長」
・・・その団長は、地学博士でした。大祭に参加後、すぐ六人ともカナダの北境を探険するという話でした。私たちは、船を下りると、すぐ旅装を調えて、ヒルテイの村に出発したのであります。実は私は日本から出ました際には、ニュウファウンドランドへさえ着いたら、・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ いま新京を遁走するという八月九日の夜、観象台の課長であった著者の良人が、責任感から、他の所員を引揚団の団長にして自分は一応残留したという事実に、読者は、そのときその人の妻が良人に向っていった言葉とは、ちがった行為の価値を見いだす。妻は・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・ 少年団大会出席のためロンドンへ出て来た大男の団長が実用的なことは靴とひとしい説教の間にそろりそろりと裸の膝頭でベンチの間を抜け聖壇正面がすっかり見える大柱の下へ立った。 出口のやっと一人ずつ通れる柵の左右に僧が立って口をあけた喜捨・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫