・・・西洋では詩人や小説家の国務大臣や商売人は一向珍らしくないが、日本では詩人や小説家では頭から対手にされないで、国務大臣は魯か代議士にだって選出される事は覚束ない。こういう国に二葉亭の生れたのは不運だった。 小説家としても『浮雲』は時勢に先・・・ 内田魯庵 「二葉亭追録」
・・・これはつまり国務大臣や宮中の人が科学に縁のない人ばかりだからであろう。先達て宮中の園遊会で音楽者、戯曲家、文学者を招待されたが科学者は呼ばれなかった」とこぼしている。 蚊の撲滅 北米バルチモアーでは蚊のためにいろん・・・ 寺田寅彦 「話の種」
・・・税を出して人に月給をやったり、巡査を雇っておいたり、あるいは国務大臣を馬車に乗せてやったりする。もっとも一人じゃアこれだけの事はできませぬ、我々大勢で金を出してやるのですが、畢竟ずるにあの税などもやはり自分のために出すのです。国務大臣が馬車・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・Goethe が小さいながら一国の国務大臣をしていたり、ずっと下って Disraeli が内閣に立って、帝国主義の政治をしたようなのは例外で、多くは過激な言論をしたり、不検束な挙動をしたりする。George Sand と Eugユウジェエヌ・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・「わが家もこの国にて聞ゆる族なるに、いま勢いある国務大臣ファブリイス伯とはかさなる好みあり。このことおもてより願わばいとやすからんとおもえど、それのかなわぬは父君のみ心うごかしがたきゆえのみならず。われ性として人とともに歎き、人とともに・・・ 森鴎外 「文づかい」
出典:青空文庫