・・・いわゆるかすとり小説の影響がどんなにひどいかということは、さきごろ国立癩療養所の病者によってつくられた作品集をよんでも、まざまざと感じられた。これらの不幸な人々は、自身の不幸についてさえまともな人生問題、社会問題として正面からとりくむ態度を・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・洒落た鎌と槌との飾りをつけた小屋に、国立出版所の売店が本をならべている。―― 大体ソヴェト同盟の五ヵ年計画は、いろいろと予想外の飛躍をもって進展しているが、例えば農村における集団農場化の問題がある。 これは、ソヴェト同盟の最も積極的・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ ソヴェト同盟内の作家の作品はもとより、外国のプロレタリア作家の代表作まで、『小説新聞』に印刷され、十五カペイキで手に入る。国立出版所はロシア及びヨーロッパ各国文学古典の価値あるものから現代の作品までを廉価版にして出した。詩の朗読会、作・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 国立百貨店の前、赤いプラカートの洪水だ。 ――帝国主義とファシズムの犠牲者に階級の兄弟プロレタリアートからの挨拶を! また、 ――世界革命、万歳 レーニン廟は修繕中である。今は「レーニン留守」の感じを与える。ひろい板が・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ 階級の兄弟プロレタリアートからの 挨拶を! 世界革命万歳」 国立百貨店の建物に張りまわされたプラカートの字が夜目にもハッキリ見える。 懐しい日本語で、万国の労働者結合せよと書いた幟も飾ってある。 レーニ・・・ 宮本百合子 「勝利したプロレタリアのメーデー」
・・・ 三等車は鋼鉄だ。暗い緑色に塗ってある。プラットフォームの屋根の直ぐ下に列車の黒い屋根があり、あたりはあまり明るくないところへ、並んでるどの車もくすんだ色だから陰気に見えた。 国立出版所に働いてるナターリアが、 ――所書なくさな・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・勤先の国立出版所から一ヵ月半休暇をもらってクリミヤの休養所へ行って居る。――どんなだって?――初めのうち大変よかったけれども、あとはそうでもないように書いてよこしました。でももう直きかえって来るでしょう。――どうして? よくなら・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・労働者クラブのキネマ研究会と国立の映画学校では、男と半数の女とが新しいプロレタリア映画の完成のために教育を受けている。これは文化の生産者の方から見たことだが、もっと意識の低い大衆殊に、農村の婦人大衆に向ってソヴェト映画が文化啓蒙の役割を演じ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の芝居・キネマ・ラジオ」
・・・そういう外国人たちは、第一国立オペラ舞踊劇場でオペラばっかり見ているよ。「ローヘングリーン」や「カルメン」。「オニェーギン」「スペードの女王」「サドコ」はこわくないからね。 ――ふーむ。そんな古典をやってるところもあるのかな。古典をすて・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
いまはもう鹿児島県に入らない土地となった奄美大島の徳之島という島から十二歳の少女が収容船にのって国立癩療養所星塚敬愛園にはいって来た。十歳のとき発病して、小学校の尋常四年までしかいかなかった松山くにというその少女は、入園し・・・ 宮本百合子 「病菌とたたかう人々」
出典:青空文庫