・・・ そこで土曜日に私は藤原慶次郎にその話をしました。そして誰にもその場所をはなさないなら一緒に行こうと相談しました。すると慶次郎はまるでよろこんで言いました。「楢渡なら方向はちゃんとわかっているよ。あすこでしばらく木炭を焼いていたのだ・・・ 宮沢賢治 「谷」
おかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。かねた一郎さま 九月十九日あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。とびどぐもたない・・・ 宮沢賢治 「どんぐりと山猫」
・・・その時、土曜日に何処かへ行きましょうと云った。 二 土曜日は四日で、あの大暴風雨であった。六日に麹町の網野さんのところまで誘いに行った。往きに私の歯医者を紹介する約束があった。飯田橋で三時すぎYと落ち合い、・・・ 宮本百合子 「九月の或る日」
・・・「小幡には遊べないの。土曜日んなるとね私が云うのよ、貴方も疲れてるだろうから、今日は休んで寝てなさいってね。そして、私が社へ出かけて行って、主人に金下さいって云うの。小幡が病気で医者にかかるのに金がないから下さいって云うの。――その製粉・・・ 宮本百合子 「斯ういう気持」
・・・先週は祝日があって、一日おきのところがすっかり飛び、土曜日は、『文学評論』の用でだめでした。どうぞあしからず御察し下さい。 差入れの本は、いたって無秩序にしか入れられないですみませんが、こちらもこの頃段々様子がわかって来ましたから次第に・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ これを書いているのは次の日のつまり土曜日の夕方です。今日は曇ってなかなかひえます。うちの近所に美味しい餅屋があるので、林町の父のために、さっきお餅を注文したところ。庭が五坪ばかりあって、椿の蕾がふくらんで、赤い山茶花が今咲いています。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・こう書いているうち益不安になってきたが土曜日から日、月とかけててっちゃんに行ってもらってはいけないでしょうか。島田から達ちゃんにでも広島まで出てもらって、一緒に面会して品物も渡してもらったら、伝言も出来て、いいと思うけれども、それを頼んでは・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 八月二十九日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(十国峠、熱海峠〕 八月二十九日 土曜日。 きょうはスエ子、緑郎、紀と江井という顔ぶれで、熱海をまわって十国峠を通り、つい最近出来た強羅公園のドライブウエーを宮の下・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・第一消費組合の店は土曜日、日曜日、例えばメーデーの前日、酔っ払う可能の多い日は一切酒類を売らない。ふだんでも売る店が町の中でどこときまっていて、あとは閉められたのが多い。酒場も減った。酒場でも店でもアルコールの強い酒は売ることを許されない。・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・ 土曜日は、一週間の買い入れ日です。あちらでは、日曜日は一般に全くの休日で、八百屋から肉屋、文房具屋まで店を閉じてしまいます。それ故、日曜日、次の月曜に入用なものは勿論、買いものは出来る丈この日に纏め、下町の、それぞれで名を売っているよ・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫