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・・・ ある日、太郎は、野原へいってみますと、雪の消えた跡に、土筆がすいすいと幾本となく頭をのばしていました。それを見ましたとき、太郎は、いつか雪の夜に、赤いろうそくの点っていた、不思議な、気味のわるい景色を思い出したのであります。・・・
小川未明
「大きなかに」
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・・・殊に三月の末であったか、碧梧桐一家の人が赤羽へ土筆取りに行くので、妹も一所に行くことになった時には予まで嬉しい心持がした。この一行は根岸を出て田端から汽車に乗って、飛鳥山の桜を一見し、それからあるいて赤羽まで往て、かねて碧梧桐が案内知りたる・・・
正岡子規
「病牀苦語」