・・・何かしら強い活力で幹から吹き出しているように見えた威勢のよかった葉がきわめてわずかな圧力にも堪えず、わけもなく落ちるのが不思議なようにも思われた。このようにして根もとに近いほうから順序正しくだんだんに脱落して行くのであった。 S君がまた・・・ 寺田寅彦 「病室の花」
・・・光は熱を生じ化学作用を起しまた圧力を及ぼして機械的の仕事をする。音も鼓膜を動かして仕事をし、また熱にも変ずる。しかるに此のごとく搬ばれ彼のごとく変化するエネルギーの本体は何物か。これは吾人の官能の外にあるものでつまり一つの観念ではあるまいか・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
・・・の脈やポケットをさすと見られる。この空洞の壁の墜落が地震を起こすと考える。このままの考えは近年まで残存した。重いものの墜落の衝動が地に波及するという考えも暗示されている。「地下の風」の圧力が地の傾動を起こし震動を起こすという考えが、最近・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・ペンネン技師からはひっきりなしに、向こうの仕事の進み具合も知らせてよこし、ガスの圧力や山の形の変わりようも尋ねて来ました。それから三日の間は、はげしい地震や地鳴りのなかで、ブドリのほうもふもとのほうもほとんど眠るひまさえありませんでした。そ・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・何せ、サンムトリの底の瓦斯の圧力が九十億気圧以上になってるんだ。それにサンムトリの一番弱い所は、八十億気圧にしか耐えない筈なんだ。それに噴火をやらんというのはおかしいじゃないか。僕の計算にまちがいがあるとはどうもそう思えんね。」「ええ。・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・多くの人々が、この問題の本質上、今日ではもう個人的解決の時期を全くすぎていて、これは人民的規模において、男女共通に、共通の方法に参加して、各種の管理委員会をこしらえて、自主的な圧力で改善してゆくことに決心したら、どんなに早く、解決の緒につく・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・さき頃の映画の東宝問題というものがでると、誰にもファシズムの反動文化政策というものが分るし、まして、この頃のような社会情勢に対してファシズムの圧力を感じ、それに対して反対の声をあげない人はありません。三鷹事件、下山事件の新聞記事の扱いかたな・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・しかし、作者とすれば、段々戦争が進行して来て野蛮なファシズムの圧力が文学を殺そうとすればするほど、人間として作家としての一生に、深い関係をもった弟の自殺前後のことやソヴェトから帰る前の心もちが、かえりみられ、書かずにいられなかった。 こ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第四巻)」
・・・しかし、作家たちが社会機構の中で保守封建なものとたたかいながら、営利資本の圧力に抗しつつ自身とその芸術を新しくし、なおさらに新しい作家と文学とをもりたててゆこうと欲するとき、自分たちの文学活動の自立性を、民主の立場にたって、経済的に政治的に・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・裁判が精神的・物質的圧力から必ずしも自由でないことがうかがえる。 目さきの話題だけに注意を奪われずに、わたしたちは、こんにちの反民主的な権力に影響をうけている各種の委員会の活動の本質について、積極的な発言をしてゆく義務がある。――わたし・・・ 宮本百合子 「「委員会」のうつりかわり」
出典:青空文庫