・・・「地の平和の緑樹園、安行植木苗木地帯を往く」などで、生活的・文学的感覚を社会的にひろめ深めてゆこうと努力している点で注目をひいている『埼玉文学』にしろ、同人たちは、より人間らしい社会生活の確保と、その文学の確立のために尽力してゆくという大き・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・ 青少年を護る 青少年工がこの頃の景気の中で、とかく誘惑に負け、その青春を蝕ばまれるのをふせぎ又指導するために、厚生省が産業報国の機関を動員して、優良会員数名ずつを行動隊に組織し、工場地帯、玉の井、亀戸その他の盛り場へ送り、・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・や創作「養蚕地帯の秋」などは、地方の生産、それとの関係においての人々を描き、興味があった。文学のひろびろとした発展のために無規準な地方色の偏重は不健全におちいるのであるが、その地方の生産に結びついている大衆の文学的欲求とその表現とがより潤沢・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・社会文化が生じて世紀を閲している今日では客観的な意味で、健全な恋愛のためには不毛地帯と呼ぶべきような地域が生じているからである。〔一九三八年十一月〕 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
・・・ ○東京は地震地帯の上にあって、いつも六七十年目百年目に此那大地震がある。建てても建てても間もなく埋されるそれをいつまでくりかえすのか。 ○今度の朝鮮人の陰謀は実に範囲広く、山村の郷里信州の小諸の方にも郡山にも、毒薬その他を・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・ 従弟のような経験のある人は、地図をひろげて大体重要工業地帯と諸官省の中心地帯とをさした。地図の上で指されるそれらの地区は本郷区のぐるりのどこかに隣接してはいてもうちのある林町界隈までは距っていた。心配は直接本郷あたりが襲撃されることで・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・広場の中央に一本ガス燈の立っている周囲を、四本の標で区切ったいとささやかな安全地帯があって、包をもった子供がそこへかけつけている。 書簡註。風車・乾草・小川は秋空をうつして流れている。農婦は赤い水汲桶を左右にかついで小・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・ 壺井栄さんが、偶然そのころから小説をかき出したというのは、やっぱり、この婦人作家も社会性がよわくて、女の作家という特殊地帯であらい風をさけられたからであったのだろうか。事実は、全くその反対である。壺井栄さんが小説をかいたのは、「大根の・・・ 宮本百合子 「壺井栄作品集『暦』解説」
・・・ ××終点の引かえし線の安全地帯に立っていたら、すぐうしろで、「ストライキ見に来たよ」と太い男の声がした。ふりかえって見ると、銀モールの太い紐をかけた潰し島田に白博多の帯をしめた浴衣姿の芸者がいて、男はその芸者屋の主人という・・・ 宮本百合子 「電車の見えない電車通り」
・・・の文化はなんにも残っていない。そこにあるのはヨーロッパの安物商品、ズボンをはいたみじめなニグロ、ヨーロッパ人に寄生するニグロの店員、などだけである。しかし前世紀の先駆者たちが、この「ヨーロッパ文明」の地帯やその背後の緩衝地帯を突き抜けて、「・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫