・・・ この映画ではそのほかにも犬が非常に活躍していて、この映画の現実味を助けている。地質学者の一隊が中継ぎのステーションへ向かって突進する、その荷物を橇で引いて行く犬群の頼もしく勇ましい姿は何かしらわれわれの心の奥底に触れる美しさをもってい・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・もっともこの断層の生成、これに伴なう沈下や滑動の起こった時代は、おそらく非常に古い地質時代に属するもので、その時の歪が現在まで残っていようとは信ぜられない。しかしそのような著しい地殻の古きずが現在の歪に対して時々過敏になりうるであろうと想像・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・まずたくさんの山の中から火山を拾い出し、それを活火山と消火山に分類し、あるいは形態的にコニーデ、トロイデ、アスピーテ等に区別することは地質学者のほうで完成されているとしても、おのおのの山には多くの場合に二つ以上の名称がありまた一つの火山系の・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・ 新東京の街路や河岸に立って、ありとあらゆる異種の要素の細かい切片の入り乱れた光景を見るときに、私は自然に日本帝国の地質図を思い出す。いろいろの時代のいろいろの火成岩や水成岩が実に細かいきれぎれになってつづれの錦を織り出している。この事・・・ 寺田寅彦 「カメラをさげて」
・・・ 第三に地質学上の現象として地震を見るのもまた一つの見方である。 この方面から考えると、地震というものの背景には我地球の外殻を構成している多様な地層の重畳したものがある。それが皺曲や断層やまた地下熔岩の迸出によって生じた脈状あるいは・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・ 山裾の小川に沿った村落の狭い帯状の地帯だけがひどく損害を受けているのは、特別な地形地質のために生じた地震波の干渉にでもよるのか、ともかくも何か物理的にはっきりした意味のある現象であろうと思われたが、それは別問題として、丁度正にそういう・・・ 寺田寅彦 「静岡地震被害見学記」
・・・ 実験室における割れ目の問題が地殻に適用されるとなると、そこには地質学や地震学の方面に多大な応用範囲が見いだされる。これに関してはかえって地質学者の多くが懐疑的であるように見えるが、物理学者の目から見れば、この適用は、もし適当な注意のも・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・なお進て、天文地質の論を聞けば、大空の茫々、日月星辰の運転に定則あるを知るべし。地皮の層々、幾千万年の天工に成りて、その物質の位置に順序の紊れざるを知るべし。歴史を読めば、中津藩もまたただ徳川時代三百藩の一のみ。徳川はただ日本一島の政権を執・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・四月二日 水曜日 晴今日は三年生は地質と土性の実習だった。斉藤先生が先に立って女学校の裏で洪積層と第三紀の泥岩の露出を見てそれからだんだん土性を調べながら小船渡の北上の岸へ行った。河へ出ている広い泥岩の露出で奇体なギ・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・なぜならそこは第三紀と呼ばれる地質時代の終り頃、たしかにたびたび海の渚だったからでした。その証拠には、第一にその泥岩は、東の北上山地のへりから、西の中央分水嶺の麓まで、一枚の板のようになってずうっとひろがっていました。ただその大部分がその上・・・ 宮沢賢治 「イギリス海岸」
出典:青空文庫