・・・ところが先年筑波山の北側の柿岡の盆地へ行った時にかの地には珍しくない「地鳴り」の現象を数回体験した。その時に自分は全く神来的に「孕のジャンはこれだ」と感じた。この地鳴りの音は考え方によってはやはりジャーンとも形容されうる種類の雑音であるし、・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・それから三日の間は、はげしい地震や地鳴りのなかで、ブドリのほうもふもとのほうもほとんど眠るひまさえありませんでした。その四日目の午前、老技師からの発信が言って来ました。「ブドリ君だな。すっかりしたくができた。急いで降りてきたまえ。観測の・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・或るところでは、体をうしろに反らせた駈足となり、幾本もの旗は列をとりまいてひらめき、わっしょ、わっしょという地鳴りのような声々とザッザッ、ザッザッと規則正しくふみしめる靴音は津波のように迫って、やがてその蜒々たる列伍は、歴史的な時間の彼方に・・・ 宮本百合子 「風知草」
出典:青空文庫