・・・ わたくしは小名木川の堀割が中川らしい河の流れに合するのを知ったが、それと共に、対岸には高い堤防が立っていて、城塞のような石造の水門が築かれ、その扉はいかにも堅固な鉄板を以って造られ、太い鎖の垂れ下っているのを見た。乗合の汽船と、荷船や・・・ 永井荷風 「放水路」
・・・革命博物館には、種々様々の革命的文献の他に帝政時代、政治犯が幽閉されていた城塞牢獄の監房の模型が、当時つかわれた拷問道具、手枷足枷などをつかって出来ている。茶っぽい粗布の獄衣を着せられた活人形がその中で、獣のような抑圧と闘いながら読書してい・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・我々の前には、世界帝国主義列強における最も反動的な城塞がそびえている。我々労働者・農民も、この城塞を不屈の闘争で攻め落し、国際的に重き歴史的任務に答えねばならぬ。 我々、日本の労働者・農民は、アジアにおける最も野蛮な支配体制、自国ブルジ・・・ 宮本百合子 「労働者農民の国家とブルジョア地主の国家」
出典:青空文庫