・・・ 満州事変が昭和六年九月に勃発したことは、以来引つづいて今日に及んでいる日本の全社会生活の大変動の発端をなしているが、婦選運動の流れは、ここにおいて歴史的屈折をよぎなくされている。 従来欠かさず提出されていた婦選案、廃娼案が昭和八年・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ 昭和十六年という年は、日本じゅうが大きい変動にめぐり会った年であった。私ひとりの身の上にも様々のことがあって、二十年ぶりで林町の家へ引越して来たり、その夏の苦しい気持は、もう引越すばかりになっている家の物干にせめては風知草の鉢でもと、・・・ 宮本百合子 「白藤」
昨今の複雑で又変動の激しい世相は、一方に真面目な歴史研究への関心を刺戟しているが、若い婦人たちの間にも、益々多岐多難な女性の日常生活についての自省とともに、人類の長い歴史の消長のなかで女はどのような社会的歩きかたをして来た・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・発育に従って種々な変動は起っても、兎に角大体子供の時間表に準じて、今度は自分の仕事を割り当てます。保姆を置くような家庭では、主婦の自由時間はいくらでもありましょうが、普通の下女なしの家や、一人位の助手を雇っている処では、なかなか母に余裕はあ・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・今日来た郡山の新聞記者は、明にその傾向を語ると共に、そう云う一つの変動が起った場合に余波を受けて起る箇人的野心、或は、人間の本能的功名心を示して居る。 彼は、政治記者である。 彼の云うところによると、市に大字桑野として編入されること・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・ヴェトナムでも、人間関係方面は刻々に変化しつつあり、朝鮮における人間関係方面は、こんにち世界の注視をあつめた変動のもとにおかれている。 国連参加国の内部で、公然と科学の暴力を使用せよと叫んでいる者たちがあることは、もはやかくしようのない・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・ 彼はオヤ足に何か引っ掛ったなと思う間もあらせず、今まで非常に順序よく運ばれて居た体が大変動を起した。 何かに引っかかった足は、どうしても取れるどころか、身をもがけばもがくほどひどくしまって来て、大きな大きな叫び声と共に、彼の体はす・・・ 宮本百合子 「一条の繩」
・・・女が小説をかくというそのことに対する非難の目は和らげられたにしても、既成の多くの婦人作家が属している中間的な社会層の経済的変動と、それにともなう社会意識の変化は、著しい。それらがまだ日常の雰囲気的なものであるにせよ、彼女たちには過去の文学の・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ 大石さんの小説をみても、移民という立場で働き生きる人々、第二世と云われるその子供たちの生活は、内外とも二つの国に挾まれる苦悩にみたされたものであることがわかるが、日本の文学が世界史の変動につれて将来大陸性をもつようになるとすれば、大陸・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・それに伴なう社会的変動が、思想の上にも大きく影響したはずである。しかしそういう変動を問題とするためには、その変動の前の室町時代の文化というものが、一体どういうものであったかを、はっきりと念頭に浮かべておかなくてはならぬ。 原勝郎氏はかつ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫