・・・作品として表現し得るか得ないかという外的な条件の限度を、作家として本質的な現実把握力としてこの教養の限度と自分からきめて、そこで馴れ合っているということは見られないだろうか。 歴史の或る時期に文化は本質に停頓しつつ、文学の購買力は高騰す・・・ 宮本百合子 「作家と教養の諸相」
・・・がすでに一つの重大な内容をはらんだ前進をよぎなくされていることを感じるのである。 本年度に入って「ナルプ」が外的・内的の圧力によって解散したこと、ならびにかつて文学の全野の上に鮮やかな階級性の問題を押し出して来ていたプロレタリア文学・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・その目的のために、考え、判断し、発言し、それに準じて行動する能力を奪った。外的な一寸した圧力に、すぐ屈従するように仕つけた。無責任に変転される境遇に、批判なく順応するように何年間か強いて来たのであった。日本人が今日、当然もつべき一個人として・・・ 宮本百合子 「その源」
・・・○彼は自己の生存の外的危険から最高の内的確実性を獲得し、苦悩は彼にとって所得となる、○彼の芸術における悪魔的な価値変革力、○運命に対する人間の勝利は、内面的魔術による外的存在の価値変革に外ならないという点から見れば 彼の生活は芸・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・ ところが、私達の生活は外的な事情から急変して、私の良人とその手頸についたアンリー・ブランの時計とは、共に私の日常の視野から消え去ってしまった。 そして、二年と八ヵ月の日と夜とが経過した。私が、髪の蓬々とのびている彼に窮屈な場所で会・・・ 宮本百合子 「時計」
・・・を登場させているという一部の作家たちは、以上のような関係では、外的・内的な「嫌な奴」と作家としての自己との間にどんな関係を自覚しているのであろうか。彼等が「嫌な奴」を粉砕していないという事実の人生的・文学的機微は案外にもこのあたりに潜んでい・・・ 宮本百合子 「文学のディフォーメイションに就て」
・・・ 義理人情が、日本の文学的伝統の中で芸術的表現を与えられたのは、義理といい人情という、この世の外的内的なしがらみを破り、或はまさに破らざるを得ないところまで迸った天然自然の人間性が、その柵にせかれて身もだえし、遂にそのしがらみを破ったと・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
ああいう事の起る第一の原因は、女性も男性も、自分の心を一応考えて見るだけ頭脳の訓練を持っていないことだと思います。偶々外的の関係は教師と生徒であっても、本能の発露は村の若衆と小娘との情事めいています。 男の先生と女の生・・・ 宮本百合子 「惨めな無我夢中」
・・・しかし何等外的な目的を持たないで、自分自身を築き上げ、時代と永遠とに対する自分達の個人的関係を浄化しようという欲求」に立つ詩人であり、生活の核心に近づくため「あらゆる好意とよろこびの核心は愛であること」を語る詩人であることを明らかにした。当・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・純粋客観外的客観の表象能力に及ぼす作用の表象が、感覚である。文学上に用いられた感覚なる概念も、要するにその感覚の感覚的表徴と変えられた意味を簡略しての感覚である。しかし、それなら、われわれは感覚と官能とを厳密に区別しなくてはならなくなる。だ・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫