・・・ 松島の沿道の、雨晴れの雲を豆府に、陽炎を油揚に見物したという、外道俳人、小県の目にも、これを仰いだ目に疑いはない。薙刀の鋭き刃のように、たとえば片鎌の月のように、銀光を帯び、水紅の羅して、あま翔る鳥の翼を見よ。「大沼の方へ飛びまし・・・ 泉鏡花 「神鷺之巻」
・・・内典外典というが如く、げほうは外法で、外道というが如く仏法でない法の義であろうか。何にせよ大変なことで、外法は魔法たること分明だ。その後になっても外法頭という語はあって、福禄寿のような頭を、今でも多分京阪地方では外法頭というだろう、東京にも・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・毎年の文展や院展を見に行ってもこういう自分のいわゆる外道的鑑賞眼を喜ばすものは極めて稀であった。多くの絵は自分の眼にはただ一種の空虚な複製品としか思われなかった。少なくも画家の頭脳の中にしまってある取って置きの粉本をそのまま紙布の上に投影し・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・ 須利耶さまは童子を十二のとき、少し離れた首都のある外道の塾にお入れなさいました。 童子の母さまは、一生けん命機を織って、塾料や小遣いやらを拵らえてお送りなさいました。 冬が近くて、天山はもうまっ白になり、桑の葉が黄いろに枯れて・・・ 宮沢賢治 「雁の童子」
・・・その上、はたできいている子供たちには諒解されないもっといやなことがあって、龍ちゃんがインバネスをきたまま火鉢にまたがるようにして、母に「いくら俺がやくざだってよくもあんな外道の巣へ追いこみやがった」とおこって云っていたことがあった。世話をし・・・ 宮本百合子 「道灌山」
出典:青空文庫