・・・――実際階級闘争に従っているプロレタリアートは、はっきりここでは云いかねるほかの事実もあって、夙に文芸戦線が自分達の味方でないことは知ってるんです。ただ、残念なことは活字ってやつは、社会民主主義者の書く「民衆の為に」っていう文字も、本も・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・は常人の日暮しの中からは夙に蒸発してしまっていて、僅にその蒸溜のような性質のものが、茶会も或る意味でのコンツェルンであるブルジョアの間に、骨董屋を挾んで残存している。外国人に見せるものの中に茶の湯という項は必ずある。果してそれを今日の日本の・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・さもないと、読者は、フランスの世界史的意味の退敗をさえ、ブルージェが夙に「家」で警告していたとおり、家の観念の崩壊がフランスの今日をあらしめたというような、牽強も甚だしい広告にもつられなければならない。いい加減の訳をよまされた上、景品として・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
出典:青空文庫