・・・亜米利加の人がモルヒネを多量に服して死すれば、日本人もまた、これを服して死すべし。これを物理の原則といい、この原則を究めて利用する、これを物理学という。人間万事この理に洩るるものあるべからず。もしあるいは然らざるに似たる者は、未だ究理の不行・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・ いま考えれば、作者によって、あれだけ多量・広汎にソヴェト生活報告は執筆されているときであるから「ナルプ」は、啓蒙的な必要のためには、最もじかにその目的をもって書かれているそれらの紹介を集め、出版し、普及させるのが、能率的であり、活溌な・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・鉄、ニッケル、ジュラルミン等の原鉱を多量に生産することが分ったそのためにイタリーは附近の土民との間に砲火を交えることを敢て辞さない。そして、外国の新聞はこの戦闘行為の性質を解剖して、その背後の勢力を考えるとこの白沙漠に於ける戦闘はスペインの・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・林房雄や須井一などが一応プロレタリア文学の陣営に属すように見えつつ、実質においては非プロレタリア的な作品を量において多量生産し、しかもそれがブルジョア・ジャーナリズムにおいてもてはやされているのに対して、われわれが一々それを作品によって覆す・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 私たちの生きている今日という時代には、できあいの智慧、販売されている知識、多量生産標準型の聰明さというふうなものがあんまり多い。人生的であり、生活的であるからこそ厳粛でもあり、美しく、またかがやかしい人間の智慧、知識が、それぞれの人の・・・ 宮本百合子 「いのちのある智慧」
・・・ けれども、憐れな、力ばかりある強い愛は、それを充分に導く叡智の多量を蔵さないばかりに、自分の力を持てあまして自分を傷け、殺してしまうのです。 私にとっては、自分の「まことなるもの」の感じる、我に非ず、他人に非ざる愛に到達するまで、・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・過労をしないということは、仕事をよく配分することであるから、私はそのことを心がけて、仕事は十分、多量にして居ります。一月号の『中央公論』に小説をかくので、上林へかえることは中止しました。本をよんでする仕事と小説とは全く違った雰囲気を要求する・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・したがって、こんにちフロイドの精神分析をうけつぐ人があるならば、そのひとは、第二次大戦後、性コンプレックスは、その複合体のうちにどれほど多量の経済、政治上の要因をふくんで膨脹して来たか、を見ずにいないであろう。そして、その人も、おそらくは、・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・日本絵の具といえども胡粉を多量に使用することによって厚みや執着力を印象することは不可能であるまい。写実も思うままにやれるだろう。古い仏画の内にはこの事を確信せしむる二三の例がある。これらの仏画を眼中に置いて現在の日本画を見れば、その弱さと薄・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・私は自分の内に醜く弱くまた悪いものを多量に認める。私は自己鍛錬によってこれらのものを焼き尽くさねばならぬ。しかし同時に私は自分の内に好いものをも認める。私はそれが成長することを祈り、また自己鞭撻によってその成長を助けることに努力する。これら・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
出典:青空文庫