・・・ 私が記憶していた頃の帝展では、日本画というと大作ぞろいで、一室の壁半分を一枚で占めるような大きい画が多かった。秀作も駄作も大きさで先ず観衆を瞠目せしめる風であった。今年は、それがいずれも余り大きい作品がなくなって来ている。大家連が筆頭・・・ 宮本百合子 「帝展を観ての感想」
・・・林が長い獄中生活の後、直ちに野心的な大作に着手した意気に対して敬意を表すと同時に「青年」が一九三二年の封建的軍事的絶対主義日本における階級闘争が帝国主義戦争によって一層切迫した現段階において、特に近づきつつある人民革命の歴史的意義を規定する・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・しかし、こんにち党と民主主義文学運動は、日本人民のものとしての新しい大作をもつべきであり、もたなければならない。世界の革命の一環としての日本の革命的人民の文学をもたなければならない。それはわれわれ革命的民主主義作家の任務なのだから、いまはわ・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・の選択の面では彼女の少女時代からつきまとっている貴族主義、壮美の趣味がつきまといつづけた。「出あい」を描く一方で、マリアは刺客におそわれている「シーザア」やキリストを葬ったばかりの「二人のマリア」の大作を描こうと勢いこんでいるのである。・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・何か考え込んで歩いていたね。大作の趣向を立てていたのだろう。」 木村はこう云う事を聞く度に、くすぐられるような心持がする。それでも例の晴々とした顔をして黙っている。「こないだ太陽を見たら、君の役所での秩序的生活と芸術的生活とは矛盾し・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・も少し精を出して大作を作り、も少し力を入れてウルサイ世人をばかにしたら吾人は双手に彼を擁したく思う。画かきさんはさらに煩わしい人事の渦中、平然としてボケ花中に眠る心持ちを保たねばならぬ。他人の神経衰弱を癒すにはまず陰気な顔をした患者を自由に・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫