・・・ と叫び、「吾れ実に大日本帝国のために万歳を三呼せずんばあらず!」と云い得ている。だから彼は、威海衛の大攻撃を叙するにあたって熱を帯びた筆致を駆使し得ているのである。そして、彼が軍艦に乗り組んでそこでの生活を目撃しながら、その心眼に最もよく・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
これは、いま、大日本帝国の自存自衛のため、内地から遠く離れて、お働きになっている人たちに対して、お留守の事は全く御安心下さい、という朗報にもなりはせぬかと思って、愚かな作者が、どもりながら物語るささやかな一挿話である。大隅・・・ 太宰治 「佳日」
・・・我封建の時代に諸藩の相互に競争して士気を養うたるもこの主義に由り、封建すでに廃して一統の大日本帝国と為り、さらに眼界を広くして文明世界に独立の体面を張らんとするもこの主義に由らざるべからず。 故に人間社会の事物今日の風にてあらん限りは、・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・その時期に、日本ではじめて農民の勤労姿が、郵便切手の上にうつされた。大日本帝国郵便と印刷され、天皇の紋章が真中についていたその下に、男と女で働く農民の図案がある。一言にいいあらわしきれない思いがした。 一銭という銭の単位は、数千万の金額・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
出典:青空文庫