・・・ 以上は、三浦君の羨やむべき艶聞の大略であるが、さて問題は、この姉と妹、どちらにしたらいいか三浦君が迷っているという事にあるのだ。 三浦君は、私にも意見を求めた。私ならば一瞬も迷わぬ。確定的だ。けれども、ひとの好ききらいは格別のもの・・・ 太宰治 「律子と貞子」
・・・それをすればおもしろいであろうが、この芝居では映画のいいところを大略もぎ取ってしまって、それに代わるいいものを入れるのを忘れているように思われた。そうしてせっかく新たに入れたものにはどうも蛇足が多いようである。たとえば、最後の幕で、教授が昔・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・僕が行ってノートを大略話してやる。彼奴の事だからええ加減に聞いて、ろくに分っていない癖に、よしよし分ったなどと言って生呑込にしてしまう。其時分は常盤会寄宿舎に居たものだから、時刻になると食堂で飯を食う。或時又来て呉れという。僕が其時返辞をし・・・ 夏目漱石 「正岡子規」
・・・是れが為めには娘の時より読み書き双露盤の稽古は勿論、経済法の大略を学び、法律なども一通り人の話を聞て合点する位の嗜みはなくて叶わず。遊芸和文三十一文字などの勉強を以て女子唯一の教育と思うは大なる間違いなる可し。余曾て言えることあり。男子の心・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・ この全編の大略を概していえば、天下の人心、直接すればその交をまっとうすべからず。今の世間に、この流行病あり。開国以来、我が日本の人心は、守旧と改進と二流に分れて、今の政府は改進の方にあるものなり。然るに、改進の学者流と政府との間に不和・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・ 大略これを区別すれば、第一に一身を大切にして健康を保つこと。第二に活計の道、渡世の法を求めて衣食住に不自由なく生涯を安全に送ること。第三に子供を養育して一人前の男女となし、二代目の世の中にては、その子の父母となるに差支なきように仕込む・・・ 福沢諭吉 「家庭習慣の教えを論ず」
・・・ 余輩の所見をもって、旧中津藩の沿革を求め、殊に三十年来、余が目撃と記憶に存する事情の変化を察すれば、その大略、前条のごとくにして、たとい僥倖にもせよ、または明に原因あるにもせよ、今日旧藩士族の間に苦情争論の痕跡を見ざるは事実において明・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・よって今、その所見の大略を記して、天下同志の人にしめすこと左の如し。 京都の学校は明治二年より基を開きしものにて、目今、中学校と名る者四所、小学校と名るもの六十四所あり。 市中を六十四区に分て学校の区分となせしは、かの西洋にていわゆ・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・一、義塾読書の順序は大略左の如し。社中に入り、先ず西洋のいろはを覚え、理学初歩か、または文法書を読む。この間、三ヶ月を費す。三ヶ月終りて、地理書または窮理書一冊を読む。この間、六ヶ月を費す。六ヶ月終りて、歴史一冊を読む。・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾新議」
・・・物理生理衛生法の初歩より地理歴史等の大略を知るは固より大切なることにして、本草なども婦人には面白き嗜みならん。殊に我輩が日本女子に限りて是非とも其智識を開発せんと欲する所は、社会上の経済思想と法律思想と此二者に在り。女子に経済法律とは甚だ異・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫