・・・ 飯綱の法というといよいよ魔法の本統大系のように人に思われている。飯綱は元来山の名で、信州の北部、長野の北方、戸隠山につづいている相当の高山である。この山には古代の微生物の残骸が土のようになって、戸隠山へ寄った方に存する処がある。天狗の・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
「現代日本小説大系」が刊行される意味は、ただ日本の近代文学をもう一遍よみかえし、検討し、将来の文学に寄与するという風な、すべてのこれまでの刊行会の挨拶の範囲では、使命が果されないと思う。これはまじめに日本の社会の推移を基礎に・・・ 宮本百合子 「「現代日本小説大系」刊行委員会への希望」
・・・ この本よりも成人の読者のためにかかれたのが、ウエルズの「世界文化史大系」である。ウエルズは第一次世界大戦が終って全世界が再建設の悩みにもがいていた一九一八年に、この尨大な著述に着手した。新しい世界が人間により幸福をもたらすものとして造・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・皆活板本で実記は続国史大系本である。翁草に興津が殉死したのは三斎の三回忌だとしてある。しかし同時にそれを万治寛文の頃としてあるのを見れば、これは何かの誤でなくてはならない。三斎の歿年から推せば、三回忌は慶安元年になるからである。そこで改めて・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
出典:青空文庫