・・・ 生きたモデルについて熱心な研究を続ける一方、若いケーテがこのベルリン時代にドイツのシムボリズムの画家として、その構想の奇抜なことや、色感が特別ロマンティックな点などで人々の注目をひいていたクリンガーの影響をも強く受けたことは注目される・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・はフランスやドイツの大戦後の芸術流派の影響の下に、表現の上にも横光利一の当時の作品のようにともかく奇抜であることだけは誰の眼にも明らかな試みをもったが、時を隔てて今現れた「新興芸術派」は大体の傾向として当然都会的なモダーニズムに立ったが、同・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・だが、大詰の場面にパッと本物、次には全く本ものかと思うような、しかし人間で結んだところは奇抜で、メイエルホリドが、写真で見ても一風かわった風貌をもっている所以がうなずけるようだ。 動かない人形。つめたい人形。そういうものがもっている劇的・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・「かくの如く神経過敏になり、かくの如き環境に育って、彼等はいかなる種類の思想にも喜びを感じることが出来、しかも奇抜な形をとった思想をしか認容しない。」「バルザックが、その怪奇癖と、衒学趣味と晦冥で誇張的なその文体とで、以上にのべた近代人の趣・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・きょうの百物語の催しなんぞでからが、いかにも思い切って奇抜な、時代の風尚にも、社会の状態にも頓着しない、大胆な所作だと云わなくてはなるまい。 原来百物語に人を呼んで、どんな事をするだろうかと云う、僕の好奇心には、そう云う事をする男は、ど・・・ 森鴎外 「百物語」
・・・不折まがいの奇抜な字で、余興と題した次に、赤穂義士討入と書いて、その下に辟邪軒秋水と注してある。 秋水の名は私も聞いていた。電車の中の広告にも、武士道の鼓吹者、浪界の泰斗と云う肩書附で、絶えずこの名が出ているから、いやでも読まざることを・・・ 森鴎外 「余興」
・・・中でも最も敬服する点は、先生が、目立って巧みな言い回しとか、人を驚かせるような奇抜な表現とか、刺激の強い言葉とかを、決して使われないことである。どんなに烈しい内容を取り扱われる場合でも、いかにも淡々として、透明な感じを与える。わたくしはこの・・・ 和辻哲郎 「歌集『涌井』を読む」
出典:青空文庫