・・・しかもその着実とはたんに今日の学生のすべてがその在学時代から奉職口の心配をしなければならなくなったということではないか。そうしてそう着実になっているにかわらず、毎年何百という官私大学卒業生が、その半分は職を得かねて下宿屋にごろごろしているで・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・原は金沢の学校の方に奉職していて、久し振で訪ねて来た。旧友――という人は数々ある中にも、この原、乙骨、永田、それから高瀬なぞは、相川が若い時から互いに往来した親しい間柄だ。永田は遠からず帰朝すると言うし、高瀬は山の中から出て来たし、いよいよ・・・ 島崎藤村 「並木」
・・・換言すれば、蠅はわれわれの五体をワクチン製造所として奉職する技師技手の亜類であるかもしれないのである。 これはもちろん空想である。しかしもし蠅を絶滅するというのなら、その前に自分のこの空想の誤謬を実証的に確かめた上にしてもらいたいと思う・・・ 寺田寅彦 「蛆の効用」
・・・換言すればはえはわれわれの五体をワクチン製造所として奉職する技師技手の亜類であるかもしれないのである。 これはもちろん空想である。しかしもしはえを絶滅すると言うのなら、その前に自分のこの空想の誤謬を実証的に確かめた上にしてもらいたいと思・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・政府の官途に奉職すればとて、その尊卑は毫も効なきものと知るべし。仏蘭西の大学校にて、第一世ナポレオンはその学事会員たるを得たれども、第三世ナポレオンはついにこれを許されざりしという。同国にて学権の強大なること、もって証すべし。 我が日本・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・述べれば、官報局の翻訳係、陸軍大学の語学教師、海軍省の編輯書記、外国語学校の露語教師なぞという順序だが、今云った国際問題等に興味を有つに至って浦塩から満洲に入り、更に蒙古に入ろうとして、暫時警務学堂に奉職していた事なんぞがある。 が、こ・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
出典:青空文庫