・・・フランスの運命を好転させた歴史的な戦いであるマルヌの戦闘で、故国のために傷ついた人々は、パリへ後送されてその移動班に助けられたのであった。この放射光線車は軍隊の間で「小キュリー」と親密な綽名で呼ばれた。キュリー夫人は戦争の長びくことが分るに・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ 六年制であってさえ、この実情であったのだけれども、それが国民学校となり八年制となったとき、状態はどのように好転するだろう。学校の入費の何割が国庫で負担されることになるのだろうか。この点に切実な生活からの要望があると思う。六年で尋常が終・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
・・・ヒューマニズムという豊穰な苗床さえ当時日本の文芸評論から理論性が消滅しつつあるという重大な危機を好転させ得なかった事実を思いあわせれば、長篇小説、社会小説が本質的な現実把握と文学的実践力を包蔵し得ないままに、ジャーナリズムの場面を賑わした必・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・一人の天才を期待することで、世界の歴史は好転しないし、人民の苦悩は解決しない。一握りの権力者が自分の利益から選択した外交――国際関係の運びかたで、わたしたちの生活はこんなに傷つけられた。王と王との国際性から、資本家の・軍人の国際性、それが第・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
出典:青空文庫