・・・に感動したことがあるだろうか、此程、国語と云うものが、如何程強い根を持った「国語」であることを感じた事が、只の一度でもあるだろうか。 勿論私は如何程感心したからと云って、自分達の国語が、人類の持ち得る最上のもの――完全無欠で、最も理想的・・・ 宮本百合子 「無題」
・・・最近の数年間、世界はこの最も古い而も最も若い文化、芸術の巨きい星の放つ光によって、如何程多く啓発されたことであろう。「文学は神々をさえ創造した人類への奉仕である」ことを確信し、「錯雑した歴史の事件の中に自分自らを見出し、そして全人類的な・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・その上、如何程見事な繍いとりを仕ようが、それがちゃんと出来上ってしまう迄は、たとい頼んだ人にでも、仕事の有様は見せませんでした。そして、あんな貧乏だのに御礼に金はどうしても貰わず、ただ、よい布と美しい絹糸を下さいというばかりなのです。お婆さ・・・ 宮本百合子 「ようか月の晩」
・・・彼等は一つ一つに新たな発見をすることが如何程、自分等皆の生活に重大な意義を持っているか、複雑な近代人の持ち得る以上の直覚で覚ったことでしょう。一人の人間が生きることは、何等かの意味で認識の拡張を意味し、屡の失敗に於てさえも尚、貴重な経験の一・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫