・・・何でも日清戦争中は、威海衛のある妓館とかに、客を取っていた女だそうだが、――何、どんな女だった? 待ち給え。ここに写真があるから。」 Kが見せた古写真には、寂しい支那服の女が一人、白犬と一しょに映っていた。「この病院へ来た当座は、誰・・・ 芥川竜之介 「奇怪な再会」
・・・自分はその一二を受けながら、シナの水兵は今時分定めて旅順や威海衛で大へこみにへこんでいるだろう、一つ彼奴らの万歳を祝してやろうではないかと言うとそれはおもしろいと、チャン万歳チャンチャン万歳など思い思いに叫ぶ、その意気は彼らの眼中すでに旅順・・・ 国木田独歩 「遺言」
・・・また、威海衛の大攻撃と支那北洋艦隊の全滅を通信するにあたっては、「余は、今躍る心を抑へて、今日一日の事を誌さんとす」と、はじめている。これによって見ても、独歩が、如何に当時のブルジョアジーの軍国主義的傾向を、そのまゝ反映していたかゞ伺える。・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
出典:青空文庫