・・・無闇に読みもしない書物を並べ立て、用もない孫引きの文献を並べるような事も好まなかった。 末広君の独創を尊重する精神は、同君の日本及び日本人を愛する憂国の精神と結び付いて、それが同君の我国の学界に対する批判の基準となっていたように見える。・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・学校の教科書を鵜のみにし、先人の研究をその孫引きによって知り、さらに疑う所なくしてこれを知り博学多識となるものはかくのごとき仕事はしとげられないのである。 しかれども大いに驚き大いに疑う無知者愚者となるためにはまたひろく知り深く学ばねば・・・ 寺田寅彦 「知と疑い」
・・・文学における日本の精神というとき、その専門家である国文学者は俗流孫引きの牽強に対して、常識の抱く疑問を明かにする文化的実力は有しないのである。日本の市民生活における文化一般の未発達、貧寒さということはこのような現実のありように対して云われる・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫