・・・親鸞上人のひらいた宗派である。私たちも幼時から、イヤになるくらいお寺まいりをさせられた。お経も覚えさせられた。 × 私の家系には、ひとりの思想家もいない。ひとりの学者もいない。ひとりの芸術家もいない。役人、将軍さえい・・・ 太宰治 「苦悩の年鑑」
・・・ことならば宗派があるのは当然かもしれない。しかし俳諧はまた一方では科学的な「認識」でありうる。そのためにはただ一面だけを固執する流派は少し困るかもしれない。 露月の句に「薬には狸なんどもよかるべく」というのがある。狸も食ってみなければ味・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・ ある宗派の修道者が、人から、何故死体を火葬にするかという理由を聞かれた時にこう答えた。死骸をそのままにしておけば蛆がわく。然るに蛆が食うだけ食ってしまっておしまいにその食物が尽きるとそれらの蛆がみんな死んでしまわなければならない。これ・・・ 寺田寅彦 「マルコポロから」
・・・ダールニクの価値は、はじめ何人かで組織したウダールニクによって行われる組織ある戦術が次第に一般勤労者の階級的自覚をたかめ、自発性を刺戟して、遂には工場全体をウダールニクに加入させてゆくことにこそある。宗派的に少数でかたまりきって、英雄主義に・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ インドには、宗派による沢山の階級がある。その階級の差別は極めてやかましく、たとえば、草ぶき小舎にすんでいるヒンドゥースの娘スンダーリは、自分の飲む水を、上の階級ブラマンのものたちが水を汲む泉から決して汲んではいけない。泉に近づいただけ・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ 現在、反動権力と反動文化の新しい攻撃に対してますます広汎な統一戦線が求められているとき小市民的な宗派主義を克服し、同時に「勤労者文学」一般でなく、プロレタリアートの文学の自覚を明らかにして党員作家の独自な活動により一層の展開の道をひ・・・ 宮本百合子 「文学について」
出典:青空文庫