・・・ ○ 福島警察の古書類は、当時の所謂人民と官憲との感情衝突をよく示している。その頃県令であった三島通庸に対する世評の一端もうかがわれる。熱情的な農民等が、明治維新によって目醒された自由平等の理想に鼓舞されて、・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・「二十五年には八〇%というおどろくべき数字をしめしている」「官憲による恐怖時代がまだ存在している」とかかれているのは誇張でない。最高検では、青少年の反社会的行為が、おとなのえらい人たちの行為にあらわれている社会的良心の麻痺と責任感の欠如をど・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・ 産別会議情報宣伝部が編輯し、出版した『官憲の暴行』という戦後労働運動弾圧の記録がある。現場の労働者によってかかれたらしいこの記録が、もっと各現場組合の文学的能力を生かしていたら、どんなに浸透的で永続する読後感を一般の読者に印象づけるこ・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・すると、日頃ツルゲーネフに目をつけていた官憲はその文章が不穏であるという咎で、ツルゲーネフを、ペテルブルグ要塞監獄へいれた。監禁は僅か一ヵ月であった。が、体の弱いツルゲーネフはすっかり打撃をうけ、しかも居住制限によってその後何年か自分の領地・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・を、官憲は何故めちゃめちゃに弾圧するのでしょう? その理由は、われわれにとって面白くためになる『働く婦人』が毎号発禁になると全く同じです。「働く婦人の夕べ」こそ本当に働く婦人のためになる催しだからです。雑誌を発禁にしたり、「働く婦人の夕べ」・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
・・・これはブルジョア・地主の官憲が、日本プロレタリア文化運動の唯一にして綜合的な活動体である日本プロレタリア文化連盟の具体的な活躍を、どんなに恐怖しているかという明らかな証拠である。プロレタリア啓蒙婦人雑誌『働く婦人』に毎号加えられる支配階級の・・・ 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
・・・ 官憲は大会のはじめっから終りまで「ハリコフ」という四字を、そのほかのいろんなプロレタリア芸術運動の階級性を示す言葉と一緒にタブーにした。断然いわせなかった。 だが、大会へのメッセージは、トヨタマ刑務所の内から、朝鮮プロレタリア作家・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
みなさん、しばらくでした。 私は去る四月七日、ブルジョア、地主の官憲が日本プロレタリア文化連盟に加えた狂気のような暴圧によって捕えられ、六月二十五日、八十日間の検束の後、再び自由を奪いかえして出て来ました。幸い、体も大・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・前半の旱魃の状況、その対策、日本人官憲の収奪の詳細は、百枚からあとにあらわれている。蒙古における敗戦前の日本人官憲の混乱、主人公の不安な感情をテーマとする人間の歴史的像のなかへ、もっと集約して折りたたまるべきである。その背景とし、侵略者とし・・・ 宮本百合子 「予選通過作品選評」
・・・直接行動煽動者として拘引でもされようものなら、官憲に対する烈しい反抗心が起こるであろう。聴衆に冷笑されたりしようものなら、日本人が皆非国民になってしまったような心細い感じが起こるであろう。そうすれば今よりもいっそう不安な、不愉快な気持ちにな・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫