・・・そういうスローガンが衛生教育の一つの定規になっている位だ。 青年共産主義同盟員は握手はしない。ピオニェールも握手しない。それで先ず第一に来ることは、恋愛の自由ということでも、家庭における婦人の地位の向上ということでも、要するに生産関係が・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・に、燦然と輝きながら、千年の地下の眠りから呼び覚まされたアフロジテの像に、静かな表情でコンパスと定規をあてて「……私は切に知りたいのですから……」と云った人の姿が尊く浮み上った。ほんとに、舌を持つほどの者は、「知りたいのです」という・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・有ったと見えて永久に苦しみのない静かな水の底に柔い藻に抱かれてしまったのだろう、秋のつめたい水の中も情ない人の世よりはあたたかいと思ったと見える……人なみよりも勝れて美くしい人は命が短いと云う昔からの定規に彼の人ももれなかった」 殿はさ・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・耳に鉛筆を挾み、長い髪をした主人が、或る日、両手に厚紙の巻いたのと、鉛筆、曲尺、定規とをもってゴーリキイの居場所である台処へやって来た。「ナイフ磨きがすんだら、これを描いて御覧」 手本の紙には、沢山の窓と優美な飾のついた二階建の家の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫