・・・散文家としての秋声は、客体的な力量という点で、評価されるべき作家ではないだろうか。日本の近代文学における散文の伝統というようなものが将来注目されるなら、秋声はまぎれもなく一つの典型として不動の地位にある。一応文学趣味を今日も満足させている芥・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・ しかしながら、此の二つの敵対した客体の運動に対して、いずれに組するべきかその意志さえも動かす必要なくして、存在理由を主張し得られる素質を持つものが、此の社会に二つある。一つは科学で、一つは文学だ。 もしもコンミニストが、此・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
・・・主観とはその物自体なる客体を認識する活動能力をさして云う。認識とは悟性と感性との綜合体なるは勿論であるが、その客体を認識する認識能力を構成した悟性と感性が、物自体へ躍り込む主観なるものの展発に際し、よりいずれが強く感覚触発としての力学的形式・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫