・・・ 支那人は、抑圧せられ、駆逐せられてなお、余喘を保っている資本主義的分子や、富農や意識の高まらない女たちをめがけて、贅沢品を持ちこんでくるのだ。一足の絹の靴下に五ルーブルから、八ルーブルの金を取って帰って行く。そして国境外では、サヴエー・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・集団農場・暁が、つい附近の富農の多い村と対抗しつつどんな困難のうちに組織されたか、どんな人間が、どんなやり方で――うすのろの羊飼ワーシカさえどんな熱情で耕作用トラクターを動かそうとしたか、そこには集団農場を支持するかせぬかから夫婦わかれもあ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・初めのうちは皆心配したり、びくついていたが、村じゅうこうなっては却って力がついて、一つかたまって減主義的な方法で耕作するために、随分富農や反動分子との闘争を経て来た。 第一次五ヵ年計画のすんだ今では全農戸の七割が集団農場化し、耕作機械、・・・ 宮本百合子 「今にわれらも」
・・・黒い長衣着て黒長靴と云ういでたちの富農、それら三つの頭の上に、どえらいハンマーを握った労働者の手と、カマを持った農民の手とが、こしらえてある。 勇ましい行進曲につれて、その張り物をかついだコムソモールが歩きながら、ヒョイ、ヒョイと糸を引・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ 昔、地主に欅の枝の鞭でひっぱたかれた時分は、なるほど字を知らなくたってすんだだろう。富農だけが、金時計の鎖といっしょにポケットへ短い鉛筆を大切にしまっていた。然し、革命は、土地を農民へというスローガンを実現し、農民は自分達の村を自分達・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・当時ソヴェト同盟の遠い隅々で集団農場組織に派遣された技術家とコムソモール、それを支持する貧中農群は富農、昔から村にいて革命を憎んでいる僧侶、籠絡された村ソヴェト員の一隊と、実に必死な階級闘争をつづけつつあった。農村都会プロレタリアートの社会・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ ヤスの生家は×県の富農で、本気なところのある娘だがこういう場合になると、何と云っても真のがんばりはきかない。階級性というものはこういう時こういう具体的な形で現れて来る。ヤスについて自分は兼々そう思っていたことだし、同時に、僅か二ヵ月暮・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ら十二年の星霜を経て、その深刻な根本的改変と建設との成果に立って、社会主義生産の段階に到達し、生産の全面と文化の全部門から利潤追求の企業性を排除しえたとき、国内的に勤労階級と有識人階級との対立、貧農と富農との対立が消えたと認められたことは理・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・階級としての団結力の強化をはかってる。 ――然し、ソヴェトは建設期だろ。階級としての富農や成金に対して断然指導勢力を持ってるのはプロレタリアートじゃないか。 ――そうだ。特に五ヵ年計画の三年目になってる現在では、国内の問題でプロレタ・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・る地方地主の生活に突入っていわばその骨を刻むように書いているつもりなのであるが、結局その努力も主題を発展的な歴史の光によって把握していないから、現象形態だけを追うに止り自身の粘り、社会観の基調がいかに富農的なものであるかまでを鋭く分析はし得・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
出典:青空文庫