・・・ これからお雪、良助、寝物語という、物凄い事に相成りまする。 七「これは旦那様。」 入交って亭主柏屋金蔵、揉手をしながらさきに挨拶に来た時より、打解けまして馴々しく、「どうも行届きませんで、御粗末様で・・・ 泉鏡花 「湯女の魂」
・・・ とりわけあの晩の哀蚊の御寝物語は、不思議と私には忘れることができないのでございます。そう言えばあれは確かに秋でございました。「秋まで生き残されている蚊を哀蚊と言うのじゃ。蚊燻しは焚かぬもの。不憫の故にな」 ああ、一言一句そのま・・・ 太宰治 「葉」
・・・これがまた優しくしてくれて、お母さんがいたなら、お前を故郷へ連れて行くと、どんなに可愛がって下さるだろうと、平田の寝物語に聞いていた通り可愛がッてくれるかと思うと、平田の許嫁の娘というのが働いていて、その顔はかねて仲の悪い楼内の花子という花・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
出典:青空文庫