・・・ 欧州大戦前におけるカイゼル・ウィルヘルムのドイツ帝国も対外方針の手首が少し堅すぎたように見受けられる。その結果が世界をあのような戦乱の過中に巻き込んだのではないかという気がする。ともかくもこれにもやはり手首の問題が関係していると言って・・・ 寺田寅彦 「「手首」の問題」
・・・満洲とか安南とかいう対外問題とは違って極やさしい「道楽と職業」という至極簡単なみだしです。内容も従って簡単なものであります。まあそれをちょっとわずかばかり御話をしようと思う。 元来こんな所へ来て講演をしようなどとは全く思いもよらぬことで・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・感情の三分の二ほどは恋愛的なものだが、その責任を互にさけて、対外上にも友情の仮面を便宜としているという風な自堕落なものでもないと思う。 少年少女時代から一緒に種々様々な行動をして育つ外国の両性たちの間に、細かい礼儀のおきてがあって、たと・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・自分たちの思いつきに対してひろい実際の視野から再考してみる必要がある。対外的の意味で何かやらなければならないという場合、とりつきやすいのは目の前の見た目に立つ趣向である。浦和からの娘子行進にしろ、目に立つことでは成功したろう。けれども、そこ・・・ 宮本百合子 「女の行進」
・・・同時に、対外的な場面も拡大されているのだがそういうところで日本の婦人が示す言動の、政治を意識する方法の低さから生じる非政治性というものは、やはり案外に大きい意味をもっているのではないかと思う。そういう点では、婦人参政権獲得のために苦難な道を・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ こういう門の中に、レーニングラード対外文化連絡協会があるのだ。 厚い紅い色の絨毯が敷いてある。金塗の椅子やテーブルや鏡がそこの室内にはある。楕円形の大テーブルに、ソヴェト内地旅行案内のパンフレットや対外文化連絡協会の週刊雑誌などが・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・旅行に出る前、自分は対外文化連絡協会から石炭生産組合へ紹介状を貰い、まだ地図もよく分からないモスクワの商業区域を歩きまわって、その手配をした。 バクーは石油の都である。計画に入れてはいたが、ドン・バスほど確定的に考えていなかった。廻れた・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・ モスソヴェートは附近の労働状態を考慮して閉店時間の延長を許可するであろう。 対外文化協会発行のパンフレットは 新しい共同厨房の蒸気釜の写真をのせる。「食う準備」は人類が獣の皮を腰に巻きつけて棍棒と石でマンモスと戦った時代からの・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・で、マヤコフスキーは大胆に、ソヴェトの建設事業に非同情的な外国人と、いい布地の外套を着た外国人とさえ見ればペコつく対外文化連絡協会案内人の卑屈さを、漫画化してやっつけている。 マヤコフスキーが、ソヴェトを愛し、その発達を熱望し、それを自・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 共産党は、対外的なジェスチュアとしてだけ文化綱領をかかげ、文化政策を云々しているのだろうか。わたしはそうではないと考えている。こんにち、真実をもって努力しているすべての人々の文化的業蹟、仕事ぶりそのものを援助し、新たな展開、精神の成長・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
出典:青空文庫